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食べて作って、現実リンク

京都国際マンガミュージアムで開催中の「クッキングパパ展」。同作の原画150点以上のほか、ネーム、下書きなどの制作過程がわかる参考資料なども展示されている=京都市中京区、同ミュージアム提供

 京都国際マンガミュージアムで、23日から「クッキングパパ展 旅する。食べる。料理する。」の第2期が始まった。うえやまとちによる料理マンガ「クッキングパパ」を原画で紹介する展覧会だ。同作は1985年、「モーニング」(講談社)での連載開始以来、30年以上も料理の楽しさと食を介した人々のつながりを描いてきた、今も連載中の人気“食マンガ”だ。
 そもそも、「食」はマンガと相性がいい。食べることが子どもたちの最大の関心事だった50年代、「コロッケ五えんのすけ」(杉浦茂)や「あんみつ姫」(倉金章介)らのキャラクターが活躍した。一大サブジャンルの“料理マンガ”は70年代に登場。牛次郎作・ビッグ錠画「包丁人味平」のように、ケレン味たっぷりのバトルマンガとして発展していく。
 バブル期には“グルメマンガ”が現れ、雁屋哲作・花咲アキラ画「美味しんぼ」などが、リアルな食材や料理の情報を楽しむことを提案した。近年は食べること自体がテーマのマンガが人気。久住昌之作・谷口ジロー画「孤独のグルメ」や土山しげる「極道めし」がその代表だ。

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 「クッキングパパ」は、荒唐無稽な展開も多い“料理マンガ”に、“グルメマンガ”的リアリティーを与えることで、新しいジャンルを作ったと言える。料理を趣味とするサラリーマンを主人公にした点も新しかったが、評論家の南信長が指摘するとおり、77年に「男子厨房(ちゅうぼう)に入ろう会」が発足するなど「男の料理」が流行しつつあったことも、この作品がヒットした背景にあるのかもしれない。
 「クッキングパパ」は、作者自身が自宅兼仕事場の厨房で料理を作り、それを元にストーリーを考える、という特殊な過程で作られている。毎話、マンガに登場する料理を実際に作れるレシピが掲載されるのが特徴。読者にはマンガを読むだけでなく、そのレシピをみて自分で調理する楽しみも用意されている。

人気連載「クッキングパパ」展

 マンガミュージアムでは、2008年から毎年、「クッキングパパ」に登場する料理を作者のうえやま自身が実際に作って参加者と食べ、トークとともに楽しむイベントを開いている。今回の展覧会では、過去9回のイベントで作られた料理が登場するエピソードの原画も展示しており、今月、10回目が開催された。その模様は動画投稿サイト・ユーチューブで公開中だ。

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 「クッキングパパ」はまた、福岡という実在の都市を舞台とした“ご当地マンガ”としても知られている。毎回、冒頭に近いコマにその回の舞台となる場所が描かれ、読者を作品世界にいざなう。単行本1~100巻に収録された968話を分析した吉村和真によると、この冒頭の風景で福岡県内であることが明示されたのは665回、約69%だった。しかし、主人公たちは県外、時には海外にまで足を延ばすこともある。
 今回の展示では、雑誌に掲載されたばかりの韓国・大邱(テグ)広域市と、中国・長沙(ちょうさ)市を舞台にしたシリーズの原画がひとつの目玉だ。同展は日中韓の文化交流を目的とした文化庁と京都市の事業「東アジア文化都市2017京都」の一つとして開催された。実は大邱と長沙のシリーズも、この事業の一環で両市を訪ねたうえやまの取材が元になっている。マンガの雑誌連載と展覧会の連動は、これまであまり例がなかった試みだ。
 展覧会では、取材の様子も多数の写真で紹介している。実際の料理が、作画スタッフによってどのようにマンガの絵に変換されるか、特にモノクロのマンガで色彩をどのように表現しているのか、といった観点で見直しても、多くの発見があるだろう。=朝日新聞2017年11月24日掲載