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「中央銀行 セントラルバンカーの経験した39年」書評 激動の時代 日銀の思想と行動

評者: 間宮陽介 / 朝⽇新聞掲載:2018年11月17日
中央銀行 セントラルバンカーの経験した39年 著者:白川方明 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:金融・通貨

ISBN: 9784492654859
発売⽇: 2018/10/12
サイズ: 20cm/758,9p

第30代日本銀行総裁を務めた白川方明が、日本銀行に入行した1972年から現在までの日本経済や日本銀行の政策の歴史を個人的体験を踏まえて論じるほか、中央銀行のあり方や望まし…

中央銀行 セントラルバンカーの経験した39年 [著]白川方明

 著者は39年間日本銀行に在職し、最後の5年間は総裁を務めた。キャリアの前半期に日本経済のバブル化とその崩壊に遭遇し、後半期のグローバル金融危機と東日本大震災に際しては日銀トップとして対応を迫られた。
 本書はこの激動の時代と対峙する、著者の、そして日本銀行の思想と行動の記録である。全3部中、第1、2部は、日銀の政策を縦糸とした時代史であり、ある意味で一本筋の通った通史となっている。
 しかし、中央銀行・日銀が筋を通すことには批判も多い。バブルがはじけると、なぜ日銀は公定歩合を引き上げたのかとなじられ、不況が続くと、なぜ日銀は大々的な金融緩和を断行しなかったのか、と非難される。
 むろん日銀は拱手傍観していたわけではない。金利引き下げという伝統的金融政策に加え、金融機関からの資産買い入れによってマネタリーベース(中央銀行通貨)を拡大させるという非伝統的金融政策にも着手した。批判の要点はこうした政策が「大々的」ではなかったということだ。
 安倍第2次政権下の「異次元金融緩和」はこのような批判の上に立つ。2%のインフレ率を目標に掲げ、インフレ期待を高めることによって経済の活性化を図ろうとする。
 だが、2%を明示化し、政権の売りとすれば、目的と手段の関係が逆転する。数字の達成が至上命令となり、そのためには無際限に紙幣を刷ることもいとわなくなる。いわば熱病患者を氷水につけて冷やそうとするようなものである。
 これに対し、中央銀行の目的は物価と金融システムの安定だというのが本書の基調をなす。本書を「学者」の見解として批判する者は、マネタリーベースを激増させてもなぜ2%のインフレ率を達成できないのか、なぜ経済成長率が微々たるものか、これらを説得的に説明する義務を負うだろう。
    ◇
 しらかわ・まさあき 1949年生まれ。青山学院大特別招聘(しょうへい)教授。2008~13年、日本銀行総裁。