1. HOME
  2. インタビュー
  3. 彼のことを愛しているのに、セックスだけがうまくいかない AV男優・森林原人さん×「夫のHがイヤだった。」著者Mioさん対談【前編】

彼のことを愛しているのに、セックスだけがうまくいかない AV男優・森林原人さん×「夫のHがイヤだった。」著者Mioさん対談【前編】

文:吉川明子 写真:山田秀隆

 交際当初から夫とのセックスに快感はなかったものの、「お互い愛し合っているし、そのうちよくなる」と信じていたMioさん。しかし、結婚しても変わらず、夫の要求を拒むと不機嫌になるばかり。果ては夫に堂々と浮気され、セックスレスを理由に離婚調停まで申し立てられる。別居中に夫以外の男性とセックスをして気持ちよくなれたら? と勇気を持って一歩を踏み出したところ、夫とのセックスでは得られなかった、心身が満たされる悦びを体感。そのことがきっかけで少しずつ自己を取り戻していく。

森林 この本はMioさんがセックスで傷ついて、セックスをきっかけに再生していく物語ですが、これって元夫は読んでいらっしゃるのでしょうか?

Mio 読んでいないと思います。たぶん。

森林 献本しちゃえばいいのに(笑)。この本はMioさんの立場から書かれた本なので、男の僕からすれば、おそらく夫側の再生が必要になるのではないかと思っていて、そこが気になっています。

Mio 私も、今から思えば夫はすごく傷ついていたと思います。

森林 でもたぶん再生できないでしょうね。30代後半以降の男性のセックス観を変えるのは、歳を取れば取るほど無理だと思っています。男性は、自分の身体は自分でコントロールできるものだという全能感が女性より圧倒的に高いからです。女性の場合、生理や妊娠があったり、ホルモンバランスによって心身が左右されることがあったりと、自分ではどうすることもできない場面が多々あるので、男性よりは柔軟に対応できる力が強いようです。ところが男性は全能感が強い分、今まで培ってきたセックス観を変えるということは、自分の人生を否定してゼロにするようなもの。そりゃあ恐ろしいと思いますよ。セックスにおいては男性が優位で、女性がいろいろと悩みを抱えている場合が多いのですが、そもそも男性は自分の方が優位なのに、自らその地位を手放せるわけがない。

Mio 私は離婚した今でも、夫はセックスがなければ人間的にはすごくいい人で、娘の父親としては最高だったと思っています。でも、男と女としては「もう顔も見たくない」というくらい最低でしたね(笑)。結婚していた頃、私の気持ちをわかってほしいと伝えたこともありましたが、「気持ちとか雰囲気とか、そういう目に見えないものって、俺、わかんないんだよね」と言われてしまいました。

森林 この本を読んでいると、夫がMioさんの不愉快さや嫌悪感に気づく場面はいくらでもあったはず。だって女性が「早く終わってほしい」「顔も見たくない」と思いながらセックスしていたら分かるはずですよ。

Mio 残念ながら、夫はそれが分からなかったんですよ。 私は今、行政書士、夫婦カウンセラーとして離婚にまつわるもろもろの手続きをサポートする仕事をしています。女性からの相談で、夫にあたる男性にもお会いすることがありますが、いい人なんだけど、妻の気持ちが全く分からない“ニブニブくん”が多いんです。なまじいい人なだけに、妻も変わってくれるんじゃないかと期待するし、我慢もしてしまう事例がよくあります。

森林 “ニブニブくん”だから、なおさら変化のきっかけがつかめない、か……。僕は「目隠しマッチングイベント」というのを開催しているんですけど、そこからいろんなことが見えてきます。男女が背中同士をくっつけて、その感覚だけで相手を選ぶという時間があって、女性は背中だけで「この人が好き」と感じて選ぶことができるのに、男性はまず選べない。イベントでは他にもいろんな交流コーナーを設けているのですが、男性はいかに視覚や頭に入ってくる情報、もしくは胸の感触といったことで選び取っているかがよく分かります。

Mio 男性より女性の方が皮膚感覚の精度が10倍くらい高いという話を聞いたことがあるので、それって分かる気がします。でも、今のお話をお聞きして、ますます“ニブニブくん”が鋭くなれる日が来るのかが気になります。

森林 これはね、一回どこかで傷つくしかない。僕は、人の成長は傷つくところにしかないと思っていて、京セラ創業者の稲盛和夫さんも、「傷ついたところに成長のチャンスがある」って言っています。僕は男兄弟で中学、高校も男子校だったんですね。Mioさんの元夫も男三兄弟の長男で高校は男子校、大学でも9割が男子の学部だったということですが、これはもう嫌な予感しかしない(笑)。僕は圧倒的に女性の立場が強いAV業界に入りました。そこは、男なんてはじめはもうゴミクズのような扱い。女優さんに挨拶するのもおこがましくて、現場では徹底的にダメ出しされる。そんな辛い経験の中、いろんな気づきがあったんです。

Mio でも、普通の男性はなかなかそこまで傷つく機会もないでしょうから、変わることを期待するのは難しいということなのでしょうか?

森林 そこで変わっていけるのはM男なんです。女性に罵倒され、クズとか言われてしまったら、普通の男性は自分がイニシアチブをとれないことから勃起できなくなる。でも、M男は怒られながら勃起できちゃう(笑)。今まで培った優位な地位や、男がリードすべきといった社会的な刷り込みに左右されていない。実はM男というのは、いい男なんです!

後編では、「実は女も、自分の性のことが分かっていない」「愛とセックスを一緒に考えることの危うさ」「男と女はどう乗り越えていくべきか」について語り合います。

 森林原人さん×Mioさん対談【後編】はこちら