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「私は本屋が好きでした」書評 書店に問いかける職業倫理

評者: 斎藤美奈子 / 朝⽇新聞掲載:2020年01月25日
私は本屋が好きでした あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏 著者:永江朗 出版社:太郎次郎社エディタス ジャンル:エッセイ

ISBN: 9784811808390
発売⽇: 2019/11/25
サイズ: 19cm/251p

仕事だからつくる。配本が多いから書店は平積みする。しくみに忠実な労働が「ヘイト本」を生んだ。見て見ぬふりでつくり上げられてきた“憎悪の棚”を直視し、書店と出版の仕事の実像…

私は本屋が好きでした あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏 [著]永江朗

 ヘイトスピーチ対策法が施行されて3年半。昨年12月には川崎市がヘイトスピーチ禁止条例を制定した。しかし、じゃあ書店にあふれる「ヘイト本」は? 本書は日本でもっとも書店事情に通じたライターによる試行錯誤の記録である。
 書店は売る本を自由に仕入れられるわけではない。取次から配本された本を並べるのが事実上の仕事。しかしそれでも、と著者は考えるのである。「こういう置き方をしなくてもいいんじゃないか?」「返品しちゃえばいいのにな」
 書店経営者から取次、版元の編集者まで、関係者への取材を重ねることで、彼はひとつの結論に達する。商売だからという言い訳は〈「その本で傷ついたり怯(おび)えたりする人がいても売りますよ」という開き直りと同じである〉〈その本が社会に及ぼす影響についての責任は書店も問われなければならない〉。あらゆる仕事に共通する職業倫理の問題。霞が関の官僚のことなどもふと考えてしまった。